口から食べる幸せを守るために

2020年8月12日(水)

都城市・三股町のみなさまこんにちは。

言語聴覚士の田中です。言語聴覚士とは「ことばや飲み込みのリハビリを中心としている専門職」です!

ホームページがリニューアルし、機能訓練士によるブログが開設となりました。

今回は、言語聴覚士より、『口から食べる幸せ』についてお話します。

普段何気なく食べている、ご飯やおやつ。何気ない動作の中にも“おいしい”“うれしい”“また食べたい”など様々な感情が湧きますよね。時々は外食に行って、家庭とはまた違った味を味わう!ということも食の楽しみです。

口から食べるという今まで当たり前であった、日常生活の一つを失う喪失感は計り知れないと思います。自分で食べたいものを選んで、器や箸、スプーンを自分の手で持ち口に運んでモグモグ噛んで飲み込み、おいしさを感じることがどれだけ幸せなことか。私自身、言語聴覚士として携わらせていただく中で日々感じています。

脳卒中や神経難病、認知症、精神的な問題などにより、今までのように家族と食卓を囲んで食事をすることが困難になってしまった方々がおられます。

たでいけ至福の園のデイサービスでは、摂食嚥下障害(口から食べることに何らかの問題を抱えている方)を呈する方へ口から食べる幸せを再獲得していただくため、摂食嚥下のリハビリに力を入れさせていただいています。

たでいけ至福の園の特色として、言語聴覚士だけではなく、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、看護士、介護福祉士、ケアマネージャー、施設長もチーム一丸となり口腔リハビリや食事中のサポート、また、栄養サポートもさせていただいております。

今回、摂食嚥下障害の方へどのようなサポートを行っているのか、ある利用者様の訓練風景を通してご紹介させていただきます。

この方は、筋萎縮性側索硬化症という神経難病を数年前に発症され、飲み込みが困難となり、現在は1日3食『胃ろう』から栄養を摂られております。

※『胃ろう』とは、胃に直接栄養を摂取するためのチューブを通し栄養を注入する方法です。

ご病気により、徐々に全身の筋力、飲み込みの筋力も低下していくため、口からのお食事から栄養を十分に摂ることは困難ですが、少量であれば、ゴックンと安全に飲み込むことは可能です。コミュニケーション方法としては、読唇とパソコンへの視線入力装置を利用してやり取りを行っています。

この方の“味わう楽しみを持ちたい”というご希望に沿い、言語聴覚士のリハビリでは、嗜好に合わせ、ごく少量ではありますがコーヒーや梅昆布茶等を味わっていただいています。

そんな、ある日の昼下がり、普段通りリハビリをしていると、この方がニヤニヤと笑顔で「アイスが食べたい」「バニラ」とのリクエストが!!

さっそく後日、バニラ味のアイスを用意すると、お互いニヤニヤが止まらず、この笑顔!

アイスを頬張る前には、入念な口腔体操を行って、

さあ、待ちに待ったアイスの時間!

ごくごく少量ずつではありますが、一口、また一口と味わい、

(摂取する際の角度は、誤嚥性肺炎のリスク管理も考慮し、ご本人様と試行錯誤した上でこの姿勢で介入させていただいています)

最後は「おいしかった~」「また食べたい」とご満悦。

摂食嚥下障害を呈する方、また、運動障害など、その方の障害に目を向けることももちろん大切ですが、その方の今までの生活背景やその方の性格、ご希望などを知り、障害の中から秘めた可能性を見つけ出すことも私たち利用者様を取り囲むスタッフの大切な役割です。

スタッフで協力し合い、時にはご家族のお力もお借りして、その方のリスクを最小限に抑えたうえで、その方の「やりたい」を形にする。

ご本人やご家族のご要望から、可能性が大きく広がる経験もたくさんさせていただいています。

『お口から食べる幸せ』を守るため、利用者様のサポートをさせていただきますので今後ともよろしくお願いいたします。

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